漢方では、人の体質や病状を「証(しょう)」という概念で捉えます。
この「証」には、「虚(きょ)」と「実」の2つの基本概念があり、実証はその一つです。
実証は、病邪(病気の原因となるもの)が体内で盛んになり、症状が強く現れている状態を指します。
実証の特徴は以下の通りです。
髪の毛が脂っぽい、顔は赤黒い、顔のエラが張っている、首は太く短い
大きく力強い声を出す、風邪の時舌が乾く、イカり肩である
爪はピンク色でつやつや、手の指は太い、へそは大きく深みがある
便秘がち、肌は油切っている、筋肉が硬い、肋骨が角度が広い
お腹を押すと力がある、脈は力強い、力強い歩き方をする
一方、虚証の特徴は以下の通りです。
髪の毛は乾燥してバサバサ、顔色は青白い、顎が細い、首が細い
力強い声を出す、風邪の時に舌が湿っている、なで肩、猫背
爪は白くスジが縦横にある、手の指は細い、風邪のはじめに汗をかく
へそは小さく浅めである、下痢しやすい、肌は乾燥してカサカサ
体格が細い、筋肉が柔らかい、肋骨弓の角度が狭い
お腹を押すと柔らかい、脈は弱い、弱々しい歩き方をする
ざっと読んでみてあなたはどちらが近いでしょうか。
どちらかに決められれば実証あるいは虚証ですが、決められない時は中間証になります。
実証の方がいいかと言うとそうでもなく病気の元である「邪(じゃ)」が増えてしまうという弱点があります。
逆に虚証の場合は正気(エネルギー)が不足しているので、病気が入りやすいのです。
もう少し詳しく説明すると実証の場合、体力があるので丈夫で病気に対する抵抗力が強いため病気にかかりにくいのですが、病気にかかると症状が強くでます。
高熱、激しい痛み、便秘、炎症など、症状が明確で、病気の勢いが強いです。
実証は邪気を追い払う力が強いため、体内に侵入した病邪(ウイルスや細菌など)を排除しようとする力が強いことから、症状も強く出るのです。
実証の例としては、風邪の初期で、高熱が出て、汗をかいていない状態。
急性の炎症で、赤く腫れて熱を持っている状態。
便秘で、お腹が張って便が出にくい状態。
血圧が高く、顔色が赤い状態。
か挙げられます。
虚証は実証とは逆に、体力や抵抗力が低下している状態です。
虚証は、病気に対する抵抗力が弱く、症状も弱々しく現れる傾向があります。
つまり実証、虚証とは元々の体質とその方の現在の状態の両方をさすのです。
従って漢方薬の選択をする場合は患者の「証」に合わせて選択します。
実証の患者には、病邪を追い払う作用のある「瀉下薬(しゃげやく)」や、炎症を鎮める作用のある「清熱薬(せいねつやく)」などが用いられます。
虚証に対しては「補う」治療を行います。
虚証のタイプによって、様々な漢方処方が用いられます。
胃腸が弱い虚弱体質には「六君子湯」や「補中益気湯」
冷え性の場合は「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」などが使われます。